竪琴の音色に誘われて

プロローグ


 酒場から笑い声や怒声が聞こえてきてもおかしくは無い夜。
 しかし今夜はまったく違う、シンと静まり返った天使の広場に女性が一人、竪琴を片手に歌っていた。音色が溶け込みそうなくらいの夜空の演出に月光のスポットライト。静かに故郷の歌を歌う。
 それから歌い終わると空を見上げた。

 魔物が目を光らせて獲物を食う。そんな光景が見えてきそうな森の中にある、たった一つの小屋で、読書をしている女性も、本を閉じて机に置き、窓から空を見上げた。
 夜空に浮かぶ星たちは、二人に気がつくと、そっと微笑みかけた。



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